ブログBLOG

【最終回】トゥルースの視線

Truthは36年の歴史に幕を閉じます
~長い間ありがとうございました~

トゥルース・アカデミーが教室として36年、教育用レゴブロックやロボット教材を活用したSTEAM教育の教室として25年が経ち、今月末でその歴史に幕を下ろします。STEAM教育を始めたころは、なかなか教育としての意義を認めていただけませんでした。しかし、科学館や学校での普及活動、ロボットコンテストの運営、生徒たちのロボコンでの活躍などを通して、今では、ロボット教育やSTEAM教育のパイオニアとかレジェンドとか言われるようになりました。最後に歴史を振り返ってみたいと思います。

1988年 板橋区にて「トゥルース進学アカデミー」という名称で、進学塾としてスタート
子供たちには、高い目標を掲げ、自分の可能性が無限であることを知り、その目標に向かって自らが責任を持ち誠実な努力を行うことを体得してもらいたく、「高き目標を掲げよ! 学習とは自らとの闘いであり、学力とは自らが生きてきた軌跡である」をモットーとしていました。
2000年 レゴとロボットの科学教室を城北教室(板橋区)でスタート
プログラミング教育を模索している中、ロボット教材「レゴ・マインドストーム」と出合い、今で言う「STEAM教育」をスタートさせました。プログラミング教育・ロボット教育の始祖・シーモア・パパート(MIT)が説く「コンストラクショニズム(構成主義)」という教育理論を日本の教育に広げることを使命としました。「子どもたちは生まれながらにして科学者であり、芸術家。輝ける個性と才能を思いっきり伸ばし、世界の舞台に羽ばたいてほしい ― それがトゥルース・アカデミーのモットーです」を掲げました。知的好奇心と探求心を刺激し、気づきや発見の感動を通して創造力と問題解決を育成する、独自のカリキュラムを築いてきました。その後、2001年に日吉校(2018年に閉校)、2004年に飯田橋校を開校しました。城北教室は2005年練馬に移転。
2001年 ロボカップジュニアと出合う
関東での初めてのロボットサッカー競技会が日本科学未来館7階の小さな会議室で行われて、城北教室の生徒1人が参加。池田・中島が初めて審判を務めました。その後、FC日吉の4人組の活躍から始まり、多くのトゥルースの生徒たちが大会で活躍するようになりました。私も2004年関東ブロック大会、2005年日本大会(どちらも日本科学未来館で開催)の総指揮を執り、2004年に関東ブロック運営委員会を立ち上げ初代ブロック長を務めました。また、予選となる神奈川ノード(現在の神奈川・西東京ノード)を立ち上げ、運営。そして、2014年からロボカップジュニア・ジャパンの理事を務めております。一方、普及活動として杉並区立科学館、日本科学未来館で毎年の講座を担当したり、小中高校への出張授業(場合によっては1年間担当)を行ったりしてきました。その後、FLLやRoboRAVE、宇宙エレベーターロボット競技会と、子供たちの活躍の場が広がっていきまた。
ロボカップジュニア関東ブロック
中央林間小へロボット出張授業
2002年 夏期特別授業(夏休みサイエンス講座)がスタート
通常授業は週1回50分授業ですが、もっと時間を取ってじっくりと「プロジェクト学習」を行いたいと考え、
70分~90分×2回の授業を夏休みに行う「夏期特別授業」をスタートしました。冬休みはこの年から各教室で「クリスマスパーティ」を行い、レゴのゲームや作品コンテスト、生徒が製作したレゴを使った映画の上映を行いました。2003年からはロボットコンテストなどを加えて会場を品川区の「きゅりあん」に移し、7階全フロアを借り切り、毎年生徒やご家族、友人などで数百名が楽しみました。しかし、ロボカップジュニアの大会が前倒しになり時期が重なったため、2009年最後となりました。その後「冬休み特別授業」に切り替えました。なお、1か月かけたクラスのメンバーがチームとなってプロジェクトの取り組む「卒業制作」は2006年から始まっています。
夏期特別授業「学ぼう!耐震構造」
レゴムービーで映画製作
オリジナル競技で開催、NESTロボコン
クリスマスパーティーで開催したロボコン「「X'masチャレンジ」表彰式(2008年)
2003年 NESTの前身RISEを立ち上げる
2001年から「こどもロボット研究室」というロボット講座を都内各地で開催してきましたが、現在のエレファントアリー(八王子)とエルプレイス(戸田・浦和)、フォルツァ(野田)を運営する仲間と任意団体「RISE科学教育研究会」を設立しました。そして、都立産技高専の名誉教授や教授が参加して下さり、2012年「NPO法人科学技術教育ネットワーク」(NEST)へ。現在でも続く「NESTロボコン」「ロボットの鉄人」(2泊3日の合宿)の他、「サイエンスキャンプ」(2泊3日)や「オーシャンプロジェクト」(1泊2日)という、山や海でのデータロギング活動やロボットでのシミュレーション活動、指導者養成講座を行いました。これらの活動は、ICTを活用した教育実践事例の全国コンテスト「ICT夢コンテスト」で2011~13年、3年連続で「CEC奨励賞」を受賞。また、モンゴル高専(ウランバートル)にも2回訪問し、1年生全クラスに授業を行いました。
サイエンスキャンプでデータ分析
サイエンスキャンプでデータ採取しながら自然観察
サイエンスキャンプでエネルギー実験
オーシャンプロジェクトで海洋観察
シュノーケリングで海中観察、オーシャンプロジェクト
ICT夢コンテストでNESTの活動をプレゼンする中島
ICT夢コンテスト受賞
2004年 初の世界大会出場
城北教室のサッカーチーム「クイック&スロー」がトゥルース初の世界大会出場を果たしました。リスボンで行われ、4位の成績を残しました。その後、06ブレーメン、07アトランタ、10シンガポール、11イスタンブール、12メキシコシティ、13オランダ、14ブラジル、15中国合肥、16ライプツィヒ、19シドニーに出場。最大数チームが参加することもあり、世界チャンピオンも多数輩出しました。また、アジアパシフィック大会にも17バンコク、19モスクワ、21愛知に参加しています。
2010シンガポール世界大会で優勝「3t-robot」
世界チャンピオンAmalgam(2013年)
振り返ってみると、2000年からの数年間で現在のTruthの基礎がほとんどできていたことに我ながら驚きます。その数年でまいた種が大きく成長し、現在のTruthにつながっていることを実感します。子供たちの輝く笑顔に毎日囲まれ、そして、保護者の皆様が私共の教育理念をご理解下さり、ご支援、ご協力くださったからこそ、Truth独自の教育を25年間も続けてこられたのだと思います。

通われている皆様には、最後まで責任をもって学習を続ける機会をご提供することができませんこと、心よりお詫び申し上げます。Truthの教室はなくなりますが、今後もNESTやロボカップジュニア、RoboRAVE、宇宙エレベーターロボット競技会の役員は続けていきますので、これからも皆様と顔を合わせることがあるかと思います。またお会いできることを楽しみにしております。

改めて、皆様のご支援とご協力に心より感謝申し上げます。お子様たちが成長し、大きく羽ばたいてくれるよう、陰ながら応援してまいります。本当にありがとうございました。

<ブログでTruthの歴史が見られます>
■Truth通信(2010年以降):https://truth-tsusin.blogspot.com/
■トゥルースの視線(初回から):https://truth-shisen.blogspot.com/
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳

【第198回】卒業生からの言葉

~ 熱い日々を共に生き、皆立派に社会に巣立ちました! ~

トゥルースが閉校することを知った卒業生からも、温かい言葉をもらいました。トゥルース最初のロボットの生徒(後に「FC日吉」と名乗った4人:視線117回https://truth-shisen.blogspot.com/2017/04/117.html)からは、LINEでメッセージを送ってくれました。出会った当初は小学低~中学年くらいの子たちがもう30才台になり、結婚をしていたり、子供ができていたり、世界を飛び代わっていたり、研究に励んでいたり、立派になりました。

●帰る場所が一つ減った気がします。フィールドは変わりましたが、今でも世界各地で暴れ回ることのできる素地をつくっていただいた先生方、仲間たちには本当に感謝しています。 
●Truthは今の活動の原点だと思っています。 
●今でも初めて教室に行った時のことを鮮明に覚えています。今では当たり前のようにプログラミング教室が多く存在しますが、自分たちが小学生だった当時においては振り返ると最先端の教育を受けさせて貰っていたんだと思います。レゴで学んだ授業は、今の4人がものづくりで世の中に貢献してることの礎になったのは間違いないと思います。社会人となった今、より深く感謝しています。

 また、卒業してから講師として後輩指導を行ってくれ社会人として活躍しているOBや、今年の4月に社会に巣立つOBからもメッセージをもらいました。

●教室閉鎖とのこと、突然のお話に驚くとともに36年間という長い間、常に新しい教育を行ってきた先生に改めて尊敬の念を抱いております。私は生徒としても講師としてもトゥルースに通い、多くのことを学びました。私の思考力や自己管理能力の大部分はトゥルースで身に付けられたものであり、もしトゥルースに通っていなければ、今の私にはなれていなかったです。長きにわたり、多くの生徒に貴重な学びを提供してきた先生のご尽力に深く敬意を表するとともに、私自身多くのことをトゥルースで学べたことに心より感謝申し上げます。 
●私が生まれたのが1998年、トゥルースがSTEM教育を開始したのが2000年ということで、本当に良いタイミングで生まれ、良いタイミングでトゥルースに出会い、中島先生・池田先生をはじめとする良い師、良い仲間、そして良い教材に恵まれて、生徒としても講師としても楽しく過ごすことができました。高専進学をはじめ、その後の進路にも大きく影響を受け、トゥルースとの出会いが人生の最大の分岐点といっても過言でないです。
●12歳でトゥルースに入って、先生方や先輩、同期から沢山刺激を受けました。先輩のロボットを真似しながら取り組んだ最初のレスキュープライマリ、最高の先生方に教えて頂いたメイズの授業が懐かしく思い出されます。質問をすれば一緒に考えてくれる環境があったこと、成果を発表できる場があったことが、答えのない課題に対して学びながら取り組む姿勢を自然に身につけることができたと感じています。
●講師になってからは、生徒の時以上に学びが多かったように思います。特にメンターの業務では、自分がただ教えるだけのティーチャーにならず、生徒が自分で考えて取り組むのを助けるファシリテーターである事の大切さを痛感させられました。偉大な先輩方の後任は私には荷が重く、期待された働きをできたかは分かりません。ただ、トゥルースの教育の一端に携われたことは私の誇りです。

 トゥルースと出会って、それが人生の方向性を決めるきっかけとなったという話を聞くと、教育の大切さ、その責任の重さを改めて感じます。一歩も逃げないで生徒と真正面から向き合うことを信条としてきました。時には、これでよかったのか?もっと違う方法があったのではないか?と悩み苦しむときもありました。今は、共に過ごした時間、そして、今過ごしている時間の大切さをかみしめて、トゥルースの揺るぎない理念を最後まで貫こうと思います。残り少ない日々となりましたが、よろしくお願いいたします。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳
2002年当時のFC日吉

ロボカップジュニア・ジャパンオープン2025名古屋

~ 最後のTruthチームとなる5チームが出場! ~

来る3/28(金)~30(日)、名古屋市国際展示場(ポートメッセなごや)第3展示館にて、ロボカップジュニア・ジャパンオープン2025名古屋が開催されます。現時点では、210チーム560人の参加を予定しています。

 今年から競技の構成が変わり、サッカー・レスキュー・OnStageという各競技の中のカテゴリーとしてワールドクラス(WC)とチャレンジクラス(CC)が置かれ、さらにリーグが分かれます。今年は、CCにサッカーライトウェイト・ユースが加わりました。ライトウェイトのチーム数が大変多く、ジャパンオープンでの競技運営が限界になってきていること、小学生~高校生までと年齢層が広く実力差も大きいため、中学生以下が参加できるリーグを新設することになったのです。そのため、全13競技が行われることになりました。

Truthからは最終的に、関東ブロックの成績が、サッカーCCエントリー2位「チーム・ノーブル」、レスキューWCライン1位「蒲焼き」、レスキューWCメイズ1位「GTR」、レスキューCCメイズ4位「スパサト」、オンステージCCエントリー3位「チーム・ダイナソー」の5チーム13名が関東ブロックから推薦され、関東代表として出場します。今回もNPO法人科学技術教育ネットワーク(NEST)で遠征ツアーを組み、トゥルースとエレファントアリー(八王子)、エルプレイス(さいたま・戸田公園)、都立産技高専の15チームがツアーに参加し、メンター(指導者)やご家族を含め総勢70名を超えるツアーとなりそうです。ツアーでは競技以外は団体行動なので、寝食や行動を共にすることで、新しい友達や先輩後輩ができ、その密度の濃い交流を通して、質のの高い有意義な学び合いが実現されています。今年は、関東ブロックで敗退したチームのメンバーである中学生3人が学びのために、副審などのボランティアスタッフとして大会に参加すします。彼らには大きな学びが待っていると思います。

 また今年も、会場はレゴランド・ジャパンの隣、近くには「リニア・鉄道館」もあります。昨年同様、会場内に「レゴランド・ジャパン連携コーナー」が設けられれます。入場無料ですので、お時間がありましたら、ぜひTruthチームの応援、お願いいたします。
RCJJ2024名古屋NESTツアー
RCJJ2024名古屋OnStage
RCJJ2024名古屋サッカー
RCJJ2024名古屋レスキューメイズ

【第197回】新年のご挨拶

~トゥルース・アカデミー36年の歴史を閉じます~

明けましておめでとうございます。

 年末に在籍生と保護者の皆様にはお知らせいたしましたが、トゥルース・アカデミーは今年の3月をもって閉校いたします。教室として36年間、レゴとロボットの教室として24年間、皆様に支えられ、歩んでまいりましたが、ここで歴史を閉じることといたしました。

 お知らせしてから、多くの保護者の皆様からメールをいただきました。 ●もうショックで、ショックで言葉になりません。大変なご決断であったとは十分承知しておりますが、残念としか言いようがありません ●閉鎖の件、拝読し大変驚き残念に思っています ●正直とても悲しい気持ちでいっぱいです。昨晩閉鎖の話を〇〇にしましたが、泣いて『いやだよ。トゥルースじゃなきゃもうやらない』と言っていました ●親子共々心からトゥルースの授業を楽しんでいたので本当にショックです ●家族でショックが大きく、親子で泣きました」…。1/5ロボカップジュニアの活動に来た中3男子が「俺、マジ泣いた。だって本当にちっちゃい頃から通ってるんだよ。

多くの方々を落胆させてしまったこと、本当の申し訳なく思っております。温かいお言葉もたくさんいただきました。

●長い間、日本の草分けとしてのご活躍、感謝しかございません。トゥルース・アカデミーがなければ、今の息子もだいぶ違った形で成長していたかもしれません ●問題提起、目標を立てレゴを作って最後に発表というスタイルで学べるのは非常に有り難かったです。学習塾よりも大切な個性や感覚を育ててくれるカリキュラムで、この教室の貴重な資産だと思います ●いつも全力で子どもに数学、科学、物理の楽しさを教えていただき大変感謝しておりました ●他の習い事は行きたくないと言う日もありましたが、トゥルースだけは必ず行くと言っていました ●たくさんのロボット教室、科学教室はありますが先生は唯一無二で、子どもと一緒に楽しんでくれる先生に出会えて本当に良かったと思っています ●まず、先生方には感謝の気持ちでいっぱいです。自分で考えて行動する楽しさ、モノづくりの楽しさをトゥルース・アカデミーで体感できたと思います。〇〇にとっても唯一無二の場所でした ●Truth AcademyのSTEAM教育の方針に感銘を受け、幼少期よりお世話になり、これまで先生方に育てて頂いた事に感謝の気持ちでいっぱいです ●〇〇がレゴブロックを習いたいと言ったとき、私はTruth Academyが近所にあって良かったと思いましたし、近所でなくても通わせたいと思ったくらい理想的な教室でした ●我が家の子育てにおいて、トゥルース・アカデミーは重要な伴走者で、本当に沢山助けていただいたと思っています。ここでの学びは、単にSTEM教育、ロボットプログラミングというだけでなく、人格形成や社会性の成長にも大きく良い影響を与えて下さったと感じています。特に長男はトゥルースに出会わなければ、将来への展望もこれほど明確にはならなかったと思います。やっと時代が追いついて来て、高いレベルの先駆者としてトゥルースが存在しているのは意義深いことだと考えていましたが、それも先生方の情熱と献身の賜物。我々も頼りにしすぎてきてしまったなと反省する気持ちもあります。

その後教室でもロボカップジュニアの会場でも、お会いした保護者の皆様からも「Truthの教育は唯一無二」という言葉を多く頂きました。ブロックサイエンス、リトルダヴィンチ、ロボットサイエンスの全ステップの全授業、夏冬春の特別授業の全てをオリジナルで作ってきた甲斐があったことを改めてしみじみと感じ、私共が行ってきた教育に対し、深いご理解とご協力をいただいたことに、感謝の念しかありません。また同時に、ご期待に応えられない状況になってしまったことに対し、お詫びの気持ちでいっぱいです。

 卒業制作やロボカップジュニア2025ジャパンオープン名古屋と3月末まで活動は続きます。残り僅かな期間になりますが、講師一丸となってTruthらしい授業を最後までご提供いたします。何卒宜しくお願い申し上げます。
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳
中島

第11回宇宙エレベーターロボット競技会全国大会

~ 準備と経験の大切さ ~

11/23(土祝)神奈川大学みなとみらいキャンパスにて、第11回宇宙エレベーターロボット競技の会全国大会が開催されました。関東A・関東B・関西・東北・九州の各オープン大会を勝ち抜いてきたグローバル部門のチームが一堂に集結しました。どのチームも、アースポート(地上)を出発する、宇宙ステーションに到達してアースポートに戻る、地上からピンピン玉と直径チャレンジボールを最低1個は運ぶというミッションをすべて達成したチームです。小学生部門6チーム、中高生部門29チームが参加しました。

グローバル部門のルールは今年から大きく変更され、これまで宇宙ステーションの内部から球を入れていたのが、外側から入れなければならなくなりました。そのため機体は大きくならざるをなくなり、バランスをとるのがとても難しくなりました。バランスをとるために球を載せて運ぶアームを左右対称につけるチームが当然多くなりますが、中高生部門では、片方だけにして宇宙ステーションに流し込む戦略をとったチームも複数見られました。グローバル部門では機体の重さが1200gより少ない分だけ1gにつき1点が加算されるため、多くのチームも可能な限り軽量化を図っていました。特に、優勝した湘南工科大学附属高等学校のチーム「SIT-オプティマス」は、シャフト(軸)を骨組みにしたシンプルな構造にし、タイヤも三角形を2つ組み合わせた正六角形のタイヤを自作、さらにモーター制御によりスイッチとなるタッチセンサーも外すという、極めてオリジナル性の高いロボットで、なんと400g以下の重量を実現しました。軽いにもかかわらずしっかりとした構造で安全性も高く、軽い分だけスピードも速くなり、優勝を勝ち取ったとのことです。

Truth Academyから小学生部門に出場した「KISEKI」は、1回目はテザーのかけ方を間違えたうえ、焦ってロボットに触れてはいけない位置にあるロボットに触ってしまい、失格。2回目はテザーがねじれた状態で無理にロボットをセットして上がるできることができず、残念ながら実力を発揮できずに終わってしまいました。小学4・5年生のまだロボットコンテストの出場経験があまりないメンバーということもあり、本番での緊張でヒューマンエラー出てしまったようです。しかし、全メンバーがロボカップジュニアとの掛け持ちということもあり、機体の完成度、メンバーのそれぞれの役割と連携、徹底したリハーサル等、不足していた点も否定できません。
皆悔しい思いをしました。この悔しさをバネにし、至らなかったところを直視して、次の挑戦に臨んでくれることを期待しています。
「KISEKKI」
「KISEKI」
「KISEKKI」

ロボカップジュニア2025東京ノード大会

~ 明暗を分けたアクシデント ~

11/16(土)・17(日)東京都立産業技術高等専門学校品川キャンパスにて、「ロボカップジュニア2025東京ノード大会」が神奈川・西東京ノード大会と合同で開催されました。前号でご紹介したように、競技の細分化により、ノード大会(予選競技会)において関東ブロック大会への選抜が必要な競技が少なくなったため、ワールドクラス(WC)のレスキューラインとチャレンジクラス(CC)のレスキューラインエントリーの2競技が行われました。Truth Academyからは、CCエントリーに参加するチームがおらず、WCラインに3チームが参加しました。

WCラインでは、2回競技を行い、その合計点で順位が決まります。今回の大会では、被災者を救出できたチームが全体で1チームだけで、ライントレースをどれだけ競技進行の停止なしで行い、チェックポイントタイル到達によるタイル得点を得られたかかが分かれ目だったようです。

WCライン2年目の「蒲焼き」は、1回目2回目の競技ともに練習と同様の安定したライントレースを見せ、関東ブロック大会進出を決めました。救助ゾーンでの得点は取れなかったものの参加チーム中唯一救助ゾーンを自力で出口まで行くことができました。得点が困難な救助ゾーンで、いかに得点するかが今後の課題になりそうです。「continue」は、マインドストームEV3と自作のハイブリッド機で挑みましたが、調整中に自作回路が故障。1回目はコースを時間内に走破できず得点が伸び悩みました。2回目の競技では、競技中に障害物に引っかかったセンサーが外れてしまうトラブルが発生。リタイアもあり得る状況でしたが、懸命にその後の得点要素をクリアして粘りを見せ、辛くも関東ブロック大会進出。「FujiRuri」は、1回目の競技中にEV3と外部基板をつなぐケーブルが断線してしまい、2回目は残念ながらあえなくリタイア。今年1年、可動式の超音波センサーや自作のラインセンサーの作成など新しい試みをたくさん取り組んできましたが結果に思うように繋がらず、関東ブロック大会進出を逃し、悔し涙をのみました。やはり、本番でのアクシデントをいかに回避できるように準備をするか?起こりうるアクシデントを事前に想定して対応できるように準備しておくか? ― 大人でもなかなか難しいことですが、そのような力も育ってもらえればと願っています。

また、サッカーの練習競技会も行われました。WCライトウェイト「TOM」はTruth・高専合同チームです。高専のメンバーのロボットは初出場ということもありうまく動きませんでしたが、出場経験のあるTruth多賀君のロボットがフォローでき、3勝1敗と好調でした。合同チームを組む特殊な状況ですが、高専側メンバーと積極的にコミュニケーションをとってロボット同士の連携ができるように進化できれば、ブロック以降でも活躍できそうです。CCライトウェイトユース「ツチノコキッカーズ」は1勝1敗2分。試合前に回路が故障するなどトラブルありましたが、試合前に無事に自力で修理成功。しかしその影響で調整時間が短くなり普段の実力はあまり発揮出来なかった様子でした。関東ブロックで勝ち抜くには、「敵陣を向き続ける」「白線からでない」など、ロボットの基礎的な動きについて、確実にできるように大会会場での細かな調整が必要なようです。CCサッカーエントリー「チーム・ノーブル」は、昨年度のジャパンオープンにおいて日本リーグOnStageで優勝したチームです。ロボカップジュニアのサッカーは、2台vs2台で対戦しますが、4人でチームを結成しています。結果は3勝1敗とまずまずの成績。この調子で実力を伸ばしてほしいものです。

関東ブロック大会は、年明け1/12(日)・13(月祝)に行われます。サッカー、レスキュー、OnStageの各競技にTruthチームが参加しますので、ぜひ応援の程よろしくお願いいたします。
continue(レスキューライン)
チーム・ノーブル(サッカーエントリー)
蒲焼き(レスキューライン)
FujiRuri
TOM(サッカーライトウェイト)
チノコキッカーズ(サッカーライトウェイトユース)

【第196回】ノーベル化学賞もAI研究者に!

~ AIが生み出すブラックボックスの可能性~

10/9(水)スウェーデン王立科学アカデミーは、2024年のノーベル化学賞をワシントン大学のデイビッド・ベイカー教授と、グーグルのグループ会社で、ロンドンに本社のある「DeepMind」(ディープマインド)社のデミス・ハサビスCEO、研究チームのジョン・ジャンパー氏を合わせた3人に授与すると発表しました。たんぱく質の立体構造の高精度な予測や新たなたんぱく質を人工的に設計できるAI技術を開発し、生命科学の研究や創薬に革新をもたらした功績が評価されたとのことです。AIでヒトの体を構成するタンパク質の形を簡単に予測できるようになることで、その体に効果的に働く薬を見つけることがより簡単になります。がんや難病などに効く薬や、治療法のさらなる開発につながると期待されています。

これで、今年のノーベル賞は、物理学賞と化学賞の両賞がAI研究者に与えられたことになります。AI研究の第一人者である東大の松尾豊教授は、「2日連続のAI関連の授賞は、科学のパラダイム(規範)が変わりつつあるということかもしれない。従来の理論や実験科学から、データやAIを使って新しい領域を切り開く方向にシフトしなくてはいけないという意味合いも感じる」(日経新聞)「科学は今まで、人間が〈仮説〉を立て、〈実験〉をしてトライ&エラーを繰り返すことで〈結果〉を出してきた。それが、AIを使うことで“トライ&エラー”が無くなり、簡単に短時間で〈結果〉が出てくる。ただ、なぜその〈結果〉が出たのか、その部分はブラックボックスになってしまう。しかし、人間の理解を超えた“ブラックボックス”ができてしまうが、今後AIが発展していけば、より一層こうした傾向が強まる。ノーベル賞は“これも一つの科学の形だ”と示した」(テレビ朝日)と述べています。

前回予告しました、ホリエモンチャンネルで紹介された、千葉工業大学未来ロボット技術教育センター(fuRo)所長であるロボットクリエーター・古田貴之氏の「異世界転生」の技術も、このブラックボックスにつながります。fuRoでは、中国製の安価な四足歩行ロボットをトレーニングすることに取り組みました。物理的なロボットをトレーニングするのには時間とコストがかかるので、4096台のロボットが厳しいトレーニングを受け、何千世代にも渡って能力を進化させることができるデジタル空間に仮想環境「仮想世界」を作りました。なんと、2万世代のトレーニングがわずか5時間程度でできるそうです。しかし、問題は仮想世界で学んだスキル(AI)を現実の世界(物理的なロボット)に移行(転生)させるか?―その異世界転生をどうしたら可能となるか?両者では物理法則や摩擦などが異なるのでその違いを克服するため、仮想世界で訓練されたAIが現実世界に適応し、機能するための「ゲート」を編み出したそうです。

これが驚くべき成果を生みました。ロボットはどんな段差の階段を上り下りすることも倒されても起き上がることも自由にできて、どんな段差や障害物があっても自分で巧みに体を操って歩いて行けます。驚くべきは、カメラやセンサーを使用していないことです!ロボットは激しいトレーニングによって培われた「筋肉の記憶」や「反射神経」にのみ依存しているのです!さらに、屋外でも、行き先を指示さえすれば、自分の力でそこまで移動できるのです。屋外において自動操縦でまともに動く四足歩行ロボットは、世界初とのこと。これらは、仮想世界のブラックボックスでAIが自分で身に付けた成果なので、人間にはどのように学んだのかは分かりません。AI自身が見つけた最適解なのでしょう。

これまではセンサーやモーターなど様々な計算に基づいてプログラミングしていたのが、その必要がなくなってしまうのではないか?この「異世界転生」の技術は、ロボット開発の在り方そのものを変えてしまうように思えます。

ぜひ、動画をご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=Nx82jnOQDU0&t=2s
トゥルース・アカデミー代表 中島晃芳
異世界転生4足歩行ロボット

ロボカップジュニア2025開幕!

~目指せ!ジャパンオープン!世界大会! ~

今年も東京ノード大会を皮切りに、ロボカップジュニアの一連の大会が開催されます。東京ノード大会は、11/16(土)・17(日)の2日間、東京都立産業技術高等専門学校品川キャンパスにて、神奈川・西東京ノード大会と同時開催で行われます。エントリーは10/27(日)に締め切られ、2ノード合計で、98チーム237人のエントリーがありました。

 ロボカップジュニア・ジャパンでは、これまで世界大会を目指す「ワールドリーグ(WL)」とジャパンオープンを頂点とする「日本リーグ(NL)」に分かれていましたが、今回から「ワールドクラス(WC)」と「チャレンジクラス(CC)」に呼び名が変わりました。これは、ロボカップジュニア国際委員会が正式競技としていない競技でも、日本国内大会に限らず、アジアパシフィック大会(RCAP)にも参加できることから、「日本」に限定するのは適切ではないのではとの考えから変更されたのです。シミュレーション競技のCoSpaceはRCAPの競技ですが、旧NL競技は競技名にEntry(エントリー)が付けられることになりました。世界大会は14歳以上を出場条件としているため、Entryは中学生までという年齢制限もかけられています。また、「サッカーライトウェイト」はチーム数が多く、実力差も大きいことから、中学生以下を対象とする「サッカーライトウェイト・ユース」を新設しました。

 日本では、サッカーがオープンとライトウェイト、ライトウェイト・ユース、サッカー・エントリー、レスキューがメイズとメイズエントリー、ラインとラインエントリー、シミュレーション、CoSpaceレスキュー、CoSpace自動運転、OnStageとOnStageエントリーの12種目となり、かなり細分化されたため、1競技当たりの参加チーム数が少なくなった競技もあります。そのため、ノード大会において関東ブロック大会の選抜が必要となる競技が少なくなり、今回はレスキューのラインとラインエントリーのみが選抜競技になりました。関東ブロックのサッカー技術委員会は、ノード大会での選抜がないと関東ブロック大会での質の低下の可能性を懸念し、サッカーはチーム同士の切磋琢磨の場として練習競技会を行うことにしました。

 Truthからは、ノード大会正式競技のレスキュー・ラインに3チームが出場します。どのチームも経験が長く、それぞれに新しい技術の挑戦を行っているので、続く関東ブロック大会、ジャパンオープン、世界大会を目指して奮闘してもらいたいと思っています。

 ノード大会の見学は自由(無料)ですので、小学生から高校生が参加できる自律型ロボットコンテストの最高峰であるロボカップジュニアの競技をぜひご覧ください。また、Truthチームの応援もお願いいたします。
ロボカップ25OnStageエントリーTruthチーム
ロボカップ25サッカーWLTruthチーム
ロボカップ25サッカーエントリーTruthチーム
ロボカップ25レスキューTruthチーム

11月はロボコンラッシュ!

~ロボカップジュニア・ロボレーブ・宇宙エレベーター~

11月はロボットコンテストが目白押し。11/15(金)~17(日)は、加賀ロボレーブ国際大会が、山代温泉の「みやびの宿 加賀百万石」で行われます。Truthからは1チーム「A.K.Bot」が小学生部門に参加します。迷路を完走する「アメージング(a-Maze-ing)」、傾きや回転を感知するジャイロセンサーを用いて、傾斜のついた迷路を完走する「アメージング・ジャイロ(a-MAZE-ing Gyro)」、2台のロボットが土俵で戦う「スモーボット(SumoBot)」の3つの競技に挑戦します。この大会には例年、中国・台湾・アメリカ・メキシコなど海外からも参加しています。11/16(土)~17(日)は、ロボカップジュニア東東京ノード大会&神奈川西東京ノード大会(「ロボカップジュニア2025開幕!」をご参照下さい)。

11/23(土祝)は、宇宙エレベーターロボット競技会の全国大会が、神奈川大学みなとみらいキャンパスで行われます。関東A、関東オB、東北、関西、九州オープン大会のグローバル部門を勝ち抜いたチームが集結。Truthからは小学生部門の「KISEKI」が参戦します。全国大会参加チームには、3分以内のプレゼンテーション動画の事前提出が義務付けられています。通しでの撮影でなければならず、録画した動画の編集、加工は禁止(字幕も不可)されていますので、通しで成功するまで何度も取り直さなければなりませんでした。プレゼン動画は会場でも流され、優秀なプレゼンは表彰されます。

自分の可能性を追求し、果敢にコンテストに挑むことによって得られるものは大きいものです。挑戦する彼らに温かいご声援をお願いします。
KISEKI
スモーボット
アメージングジャイロ